3月14日に自動車、電機、造船・重機、鉄鋼などの主要企業が一斉に春季労使交渉に対する回答を行いました。今年も東日本大震災、タイの洪水、欧州の財政不安に伴う世界的な景気低迷、円高など深刻な環境の中での春闘となりました。そこで要求段階で多くの組合が賃金改善要求を見送った上で、定期昇給の維持と一時金の上積みを求めるのみとなりました。会社側は固定費増加を嫌い、賃金改善は4年連続でゼロ、定昇を維持するにとどまり、一時金についても前年実績を下回る回答が大半を占めました。しかし電機では韓国や台湾との競争が激しくなるなど業界全体が業績不振に陥っており、シャープは会社側から定昇凍結の提案、NECは賃金カットを要請などリーマン・ショック以来の厳しい結果となりました。 また、今年の春闘では高齢者の継続雇用が重要なテーマに位置づけられました。現行の厚生年金の支給開始年齢は段階的に引き上げられ、男性はS36.4.2、女性はS41.4.2以降生まれは65歳になります。
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現在、多くの企業が労使協定に基づいた再雇用の条件を設けているため、組合は希望者全員が65歳以降も雇用されることを求めていました。 IHIは13年4月以降に満60歳に達する従業員が60〜65歳のいずれかで定年退職日を選択できる制度を導入し、賃金については一定の割引率を乗じて支払うこととしました。また、三菱電機では専門企画職については既に65歳まで再雇用できる制度が整備されていましたが、更に13年度から定年後の再雇用者に対する賃金水準を引き上げる仕組みを導入することになりました。 しかし、高齢者雇用の充実は、コスト増や、若年者雇用の抑制につながること等を理由に本要求を見送った企業が多く見られました。 労働組合の組織率は83年に30%を、03年に20%を割り込み、現在は18%台となっています。非正規労働者が増加し、終身雇用の影は薄くなり、年功序列制度に変わって成果主義による賃金制度が浸透した今、改めて春闘が形だけのものになっているのではと考えさせられます。